佐伯祐三とパリ [アート]
宇都宮美術館で開催されている
ポスターのある街角-大阪新美術館コレクション-佐伯祐三とパリ
を観に行ってきた。
雨がずっと降り続く寒い1日で空いているかと思ったが、それなりに入っていたし、美術館内のレストランはいっぱいだった。
作品は主にパリで描かれたものが多かったが、下落合風景の作品も数点あり、その中の1枚は伯母と従姉が住んでいた家を描いたもので、実物を観ることができるとは思ってもいなかったのでちょっと感激した。もちろん今はもうない建物だが、思い出はいっぱいある。パリの街角の重量感のあるちょっとキュービズムを思わせる風景画とは全く趣が違うが、緑と土がいかにも武蔵野の色を表現していてあの時代の空気が伝わってくる。高柳有紀子という人の解説は、住んでもいない人間の下落合風景の解釈で賛成しかねる。あの空気感はねっとりなどしてはいない。むしろ、関東の冬はからからに乾燥しているのだ。かろうじて残っていた新宿区の武蔵野の雑木林は人の手の入った下草の少ない風が吹き抜けるケヤキなどの落葉樹林で、散歩や散策には最適だ。小さいトトロの森みたいなものだが、谷ユリの小さい頃は裏庭や隣が正にそんな林だった。佐伯祐三もそんな下落合をくまなく歩き回って36点もの作品を描いたのは、何気ない何か残しておきたいものがあったからではないだろうか。
それはさておいて、やはりパリの広告のある風景はパリ以外の何物でもない。空はどんよりとしていて、木々は緑ではなく枯葉色。建物は古くて重くて歪んでいる。圧倒的な重みにフランス語の文字を重ねることでパリの空気を刻み付けている。要するに、佐伯にとってパリは暮らす(住みたい)場所ではなく、絵で表現したいものいっぱいある場所なのだということが、実物を観てそんな気がした。だから、解説で日本の風景に絶望したからパリに戻ったなんて書いて欲しくない。描きたいものがパリにあったからと、解説してほしいものだ。
その他、佐伯ゆかりの画家や、同時期のパリのポスター等が展示されていた。
帰り道、インター近くの大谷石の採掘場跡のある、大谷資料館によってみた。30年ぶりで、ライトアップなどずいぶん整備されて撮影などにも頻繁に使われているようだ。
2014-10-23 19:35
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